額面と手取り:同じ給与でも国によって実感が大きく異なる理由
海外の求人を比較する際、記載されている額面給与は実態を反映していないことがあります。80,000ユーロの額面給与であっても、契約がドイツ・オランダ・フランスのどこかによって、手取りは大きく変わります。税制、強制的な社会保険料、さらには居住地によっても、年間の手取り額は数万ユーロ単位で変わる可能性があります。
累進所得税の仕組み
多くの国では累進課税制度を採用しており、所得が一定の区分を超えるにつれて高い税率が適用されます。ただし、高い税率が適用されるのはその区分を超えた部分のみで、給与全体に適用されるわけではありません。80,000ユーロと90,000ユーロを稼ぐ2人は、最初の80,000ユーロに対しては同じ税額を支払います。
税率区分の構造は国によって大きく異なります。ドイツは段階的な区分ではなく連続的な累進計算式を用い、イギリスには3つの主要な税率帯があります。スイスでは連邦・州・市区町村の税率が重なります。税率の上昇速度は、中・高所得層における国際的な差異の主要な要因の一つです。
社会保険料:見えない控除
所得税のほかに、ほとんどの従業員は年金・健康保険・雇用保険への強制加入が求められます。法的には税金ではありませんが、額面から同様に控除されます。日本では従業員負担の社会保険料は額面の約14〜15%、フランスでは22%を超える場合があります。
多くの制度では上限額が設定されており、その額を超えると追加の保険料はかかりません。そのため、所得が上限を超えると社会保険料の相対的な負担は下がります。2つの制度がどのように機能するかを理解することが、任意の給与水準での正確な手取り額計算の鍵となります。
地域・自治体による差異
主要国の多くでは、居住地が所得水準と同じくらい重要です。スイスでは所得税が連邦・州・市の3段階で計算され、ツーク州の合計税率はジュネーブの半分以下になる場合もあります。米国では連邦税に加え、州所得税がゼロ(テキサス・フロリダ)から13%超(カリフォルニア)まで幅があります。
ドイツでは連帯附加税と任意の教会税が基本所得税に加わります。オランダは所得に応じて変動する税額控除制度を採用しています。こうした地域固有の要素があるため、個人の状況をすべて把握せずに「国全体の税率」を一言で言い表すことはできません。
実効税率と限界税率:両方が重要な理由
限界税率は次の1ユーロの所得にかかる税率です。実効税率は総控除額を額面給与で割ったものです。両方とも状況に応じて有用です。限界税率は昇給や副業収入を評価する際に、実効税率は国や所得水準間で手取り額を比較する際に適しています。
よくある誤解として、最高税率を調べて「それだけ払う」と思い込むことがあります。実際には、低い区分には低い税率が適用されるため、実効税率はずっと低くなります。ドイツで80,000ユーロの額面の場合、限界税率は42%でも実効税率は通常35〜38%程度です。